先日こちらの動画を投稿しました。
今回はこちらの全制作過程をガッツリ紹介したいと思います。
時は2014年5月下旬。
年に2度ビッグサイトで行われる日本の祭典「コミックマーケット」に向けて新作を作るというのがGYARI家のいつもの流れでありますが、夏コミでCDを作る場合、その入稿期限はだいたいいつも7月の下旬あたりになります。
締切2ヶ月前となったこの頃、どんな状況であったかというと
なんも決まってなかった。
まず何を作るかきめよう
せらさんが作ったエアーマンが倒せないという昔からニコニコいる人なら誰もが知ってる曲があるんですが、その曲が収録されたCDが「CD-EXTRA」という規格になってまして。
普通にオーディオCDとしても機能するんですが、PCに入れると中身のデータも見れるという音楽CD+データCDみたいな仕様だったんですね。たしかそのCDにはドット絵とか動画データとか入ってた気がしました。
これ前からやってみたかったんですよ。
スケジュールをたてよう
2ヶ月あるから余裕余裕とか思ってるとダメです(自戒)
曲を作ろう
SchoolFoodPunishment。略してSFPとかスクパニとか言うらしいです。もう解散しちゃったらしいですけど、今更聴き漁り始めて、次の曲はこんな感じにしてみよ~と思ってました。Twitterで「あ~SFPいいっすね~」ってつぶやいたら結構食いついてくれる人がたくさんいて人気バンドじゃないか!と思った次第であります。youtubeで聴けるものはほとんど聴き尽くしたと思います。お気に入りというか参考にさせて頂いた音源はこちら。
曲をつくろう1:まずはコード進行を決めます
適当に鍵盤で荒くれてコードを決めていきます。音楽理論はあんまりよくわからないので、響きの良さとか、この流れだと自然に転調するなーとか、わりと感覚で決めます。このあたり、幼少の時ピアノを習っていてよかったなと思うポイントであります。
曲をつくろう2:ピアノ・ベース・ドラムの3トラックで1番サビまで作ります(~5/23)
これで大体曲の骨格が見えてきます。僕はギターが弾けないので、この3トラックがいつも基準になります。ピアノトリオが好きで。
曲をつくろう3:1番サビまでを作りこみます(~6/4)
3トラックからストリングスや変な音をどんどん増やして肉付けしていきます。
なのでCubaseに元から入ってるワンショット素材とか、「TAL-NoiseMaker」というフリーのプラグインが面白い音が鳴るのでそれらを駆使して分からないながらなんとかしました。
この時点である程度MIX作業も仮で同時に進めます。音を聴きながら音を作るので。
曲をつくろう4:フル版を作ります(~6/24)
1番まで一旦作りこむと、2番3番で流用できるので良いです。
そのあと展開をドゥンドゥン増やしていきましょう。
曲をつくろう5:MIX地獄(~6/29)
フル版ができたらMIX・マスタリングをします。
いままで何曲か作ってきましたが、この作業だけはほんとよくワカリマセン。
定番MIXプラグインのWAVESを買えばなんとかなると思っていた時期が私にもありました。
僕の感覚ではWAVESを買ってはじめてMIXについて勉強できる環境が揃った、みたいな感じです。
もうこれ音楽じゃなくてエンジニアリングの世界だよ…って誰かが言ってました。
ひとまず僕は下記のことを実践しています。
- ベースとバスドラ以外のトラック全部イコライザで低音カット(ハイパスフィルター)
- 各トラック、イコライザで一番美味しいところを持ち上げて他はカット(別トラックとぶつからないように)
- 各トラック、コンプを挿したり挿さなかったり(やり方はよく分かってない)
- 小さい音を大きくするのではなく、大きい音を小さくするようにすると良いらしい。
- リバーブかけ過ぎに注意。
- スネアにV-compを挿す(なんかスコーンとしたいい感じの音になる気がする)
- ボカロはイコライザで高音域をガッツリ上げる。
- ボカロはガッツリコンプ掛ける。(音量の差をなくす?)
- 伴奏だけ、ボーカルだけのトラックを、クリップしない音量でそれぞれ書き出す。
- 伴奏だけ、ボーカルだけのトラックを2MIXしてマスターにマルチコンプを挿して音圧を上げる。
- きくおさんがyoutubeで4時間で1曲作る企画をやってたのでそれを見る(情報は大体そこから)
途中で何か正解かよくわからなくなってきます。一通りいじりまくった結果、何も手を加えないほうが良かったなんてことがざらにあります。死にたくなります。
最終的には、市販のCDの参考音源を読み込んでアナライザ(波形)が同じ形になるようにしたらそれっぽくなったので、「あ、もうこれでいいや」ってなりました。
曲をつくろう6:歌詞を書きます(6/29~7/4)
ここまで来て「MIXの前に歌詞作ったほうがよかったんじゃね?」と順番を間違えたことに気付きます。
僕は歌詞を書くのが大の苦手で、いつも後回しにするからこういうことになります。
音源より先に歌詞を書く人もいるかと思いますが、僕は語彙力が皆無なので音源を先に作ってメロディに当てはめる形にしないと死にます。
名前自体は、英単語の響きで音楽の世界観を表現しているため、特に深い意味はない
Wikipedia http://ja.wikipedia.org/wiki/School_Food_Punishment
・・・・・・
午後の鐘が鳴る 景色が動き出す今
目を開いた
辿り着いた地は 今も
闇に包まれて
蠢く運命に 飲まれて
命の希望が 消えてしまうなら
誰より高く 飛び越え 掴み取る
答えを
駆け抜ける 時を超えて前へゆく
無くした夢を覚えてるか
もう一度 欠片握りしめて
枯れた心に 明かりを灯して
生きて
時が静止した すべての始まりの前
動き出した
辿り着く地まで 声が
届くよう 叫んで
揺らいだ運命を 開いて
微かに確かな 希望が見えたから
最後の一歩を 踏み越え 終末に
届いた
駆け抜けた 果てに掴み取ったもの
輝く光失ってゆく
振り向いた 君が私に問う
「これが本当に欲しかったもの?」
ちがう!
こんな こんなはずじゃないと哭く
世界が歪みそうになった瞬間
君が君が ただひとつの 命手渡してくれたんだ
満たされた 胸に君を宿して
生きて
GYARIさんは歌詞を書いてくれる人を募集しています(締切に余裕があるとき限定)
曲をつくろう7:この辺でスケジュールをぶっちぎってることに気付きます
頼まれ案件(仕事)では絶対にありえませんが、自分の案件だと気が緩んでしまうのでよくズルズル行ってしまいます。気をつけたい(願望)
曲をつくろう8:JAZZアレンジを作ります(7/4~7/11)
こんな感じにしたい。参考動画はこちら。
やっぱりピアノトリオが好き。ラテンから4beatになるとことか好きなんですよ。キメとかテーマの最後で3回繰り返すヤツとかパク参考にしました。
ベースを1音目をタイにするやつがラテンベースの特徴的なリズムなんじゃなんじゃないかと勝手に思ってるのですが、これすげえ難しくて打ち込み大変でした。
録音ボタンを押しては止め、録音ボタンを押しては止めてTASみたいなことしてました。
ドラムも大変でした。あのグルーブ感なかなか出ない出ない。
ピアノは適当に弾いたのをほとんどそのまま打ち込んでいて、間違ったとこや気になるとこだけあとで直してます。(打ち込み最高)
音圧はちょっと低めにしてます。あんまり圧縮しちゃうとダイナミクス(強弱)がなくなるからJAZZ系の曲はあんまり音圧上げないほうがいいってどこかで誰かが言ってた気がします。
そんな感じで地道に作っていって、特にトラブルもなくさらっと完成しました。
動画を作ろう
当初は紙ジャケットにしたいな~~表面を通常曲の絵にして、裏面をジャズトリオの絵にしようかな~とかなんとなく考えてたんですが、紙ジャケットは印刷に時間がかかるので納期が普通より早いのです。ので、通常のケースに仕様を変更して少し納期を伸ばそうと決意したのがこのあたり。
デッドラインは、8/1の午前中となりました。
動画を作ろう1:どんな動画にするか考えます
普通曲の方はちゃんと動きをつける、セッションの方はオマケ扱いでいつもどおりな感じにする、の2部構成の動画にします。
普通曲の方の動画の内容を考えます。
時間無いからっていうのを理由に動画の内容決めるのをやめたい(自戒)
参考動画はこちらの4:37から。
ああ~usiさんの絵いいっすね~。曲もすごく良い。
人が横見てて物が横に流れて疾走感ある感じのとこの一瞬のカットのとこだけを参考にしたい!
動画を作ろう2:ラフを起こします(7/16)
この辺で「そういえば最近CLIP STUDIOさんが3DLTレンダリングに対応してたな…」ということを思い出します。3DLTレンダリングとは、ソフトに3Dモデルを読み込んで、線画やトーンなどを自動生成してくれる機能です。「楽器とか建物とか車とか、手で描くのがめんどくさいものは3DLTレンダリングできればすごい便利じゃね!?」と前々から思っていたのです。
早速試します。
3DLT変換SUGEEEEEEEEEEEEE pic.twitter.com/50XgBdzvQq
— GYARI (@GYARI_) 2014, 7月 16
コントラバス3DLT変換により線画がクソ簡単に出来て完全勝利したご機嫌なミクちゃんUC pic.twitter.com/xSgtKdXK8y — GYARI (@GYARI_) 2014, 7月 17
クッソほど大変だったドラムも簡単にできてコロンビアしたカイト兄さんUC pic.twitter.com/wGQrEdsCbk
— GYARI (@GYARI_) 2014, 7月 17
最高か。
個人的には3Dからは線画だけ変換して色塗りは自分でできれば良いかな思ってます。3Dモデルそのままだと「3Dモデル感」が出てそこだけ浮くので、自分が描いたキャラクターとテイストの差が出ないようになじませるようにします。 (別記事で詳しく解説するかもしれません)
動画を作ろう3:メインビジュアルを描きます(7/16~7/21)
なんだかんだしまして完成したのがこちら。
(今見るともう少し色数減らして暗い感じにしても良かったかなという気がします)
リンちゃん
学校がテーマということでリンちゃんには制服を着せます。でもただの制服じゃなんだか物足りないのでちょっと模様を付けました。インスピレーションはツイッターで偶然見かけたこのへんから。
こちらは「宇宙セーラー」。その名の通り、リボンや襟・スカートに宇宙模様があしらわれており、着るだけで宇宙をまとったような気分になれます。爽やかな白の薄手生地で、着心地も良いです♪ pic.twitter.com/DCKn5kRL0G — 不思議かわいい雑貨店 アランデル (@Arundel_shop) 2014, 7月 17
そういやニーアの服にはケルト模様っぽいのがあったな…と思ってそれっぽい模様を敷いてみたんですが、素材が悪かったのかゴテゴテしすぎたので却下しました。もうちょい華やかな方がいいかも。ってことでフローラルでシームレスないい感じの雰囲気のフリーのパターン素材を探したのですがなかなか見つからず。いいの見つけた!と思ったらライセンス情報が書いてなかったり。その素材のコメント欄に「この素材はクリエイティブ・コモンズ3.0ライセンスですか?」→サイト運営者「コレ匿名でウチに送られてきたものだから分かんねーんだわ。テヘペロ。」みたいなことがアメリカ語で書いてあってクソッタレェェェェェエエエエと思いました。ムカついたので自分で作りました。
シームレスでフローラルなパターン
似たような感じでポリゴンっぽいパターンも作りました。(WEBデザインのトレンド「フラットデザイン」で一時流行ったらしい)ところどころに使ってます。
シームレスでポリゴンなパターン
オーバーレイなどで乗せるといい感じになります。(別記事で作り方の解説、素材配布などあるかもしれません。)
動画を作ろう4:トリオ絵を描きます(7/24)
いつもの3人にも制服を着せます。(いつもとあまり変わらない)
動画を作ろう5:動画を編集します(7/22~7/31)
動画作成ソフトAfterEffects上に平面画像パーツを3D的に奥行ある感じに配置して、カメラだけもりもり動かせばいい感じにならないかな~とか考えて動画はあんな感じになりました。
こんな感じ。
セッションの方は紙芝居動画なのでたいして難しいことはしてません。
花火大会に行こう(7/26)
「全部やる」がポリシーなので花火も見に行きます。
大丈夫、間に合います。間に合います。
(糞暑い中食ったかき氷が最高うまかった。)
突然の法事により帰省(7/28-7/29)
/(^o^)\ナンテコッタイ
こういうことがないとも言えないから余裕を持った進行を心がけましょう。
曲名・ロゴを考えよう(7/29)
実はこの辺まで曲名が固まってませんでした。
ということで「Scramble Full Panic」に決定。Scrambleは「(戦闘機が)緊急発進する」とか「奪い合う」とかいう意味があるし、Fullは「お腹いっぱい」という意味もあるし、パニックっぽいし雰囲気合ってていいかなと思ってます。多分ネイティブ的には変な意味になりそうですが、英単語の響きで世界観を表現しているからいいんですよ(震え声) あと略してスクパニだし。
ロゴはフォントにパターンを敷いたシンプルなものにしました。(正直時間なかった)
色はScrambleでFullなPanic感のある赤系の色にしました。(?)
ジャケットデータを作ろう(7/31~8/1)
CDの中身はマスターCDを送らなきゃいけないので締切に間に合うように事前に宅配便等で送らなきゃいけないのですが、印刷データはネットで入稿できるのでギリギリまで作業できます。(※入稿ファイルに不備があったり回線がなかなかつながらないなどして締切時間を過ぎるとプレス会社さんにとっても迷惑をかけるので余裕を持った入稿を心がけましょう)
ということでデータを作りました。
基本的に以下のことを気をつけていれば不備なく入稿できる可能性がぐーんと上がります。
- プレス会社のテンプレートを使用
- 塗りたし3~5mmまでちゃんと描画する(切り取り線の外側です)
- 画像は解像度350dpi以上(ドットの数です)
- カラーモードはCMYK(印刷用のカラーモードです)
- インク量は合計300%以下(カラーピッカーから色を選べばOKな気がします)
- 必要なロゴ・表記を入れる(DiscマークとかMade in ●●●●とか)
- 全ての画像を埋め込みにする(プレス会社によっては配置で)
- 全てのフォントをアウトライン化(イラレの場合、Ctrl+AからのCtrl+Shift+Oでイッパツ)
- イラレの場合、Ctrl+Yでいらないパスが紛れてないか確認
- プレス会社のソフトのバージョンに合わせて保存
印刷会社ごとに入稿の案内があるので必ず一通り確認しましょう。
入稿完了(8/1朝6時)
くぅ~疲れましたw これにて完結です!
ということで今回の動画の曲が、制作データまるっと入ったデータが一緒になった変なCDがC86夏コミにて頒布されます!
これを見て気になった方は手にとっていただけるとこれ幸いです。
ではでは!!